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RF、ミリ波、THz

シリーズ:マイクロ波回路設計開発の軌跡 ~その12. 我が国のマイクロ波多重無線中継方式のエポック

エポック1:戦後から約20年間は、真空管デバイスの無線機でアナログFM多重伝送方式が主流だった。

 昭和21年、東京―大阪回線に超短波多重無線方式が設置された。周波数60MHz帯(マイクロ波でない)のAM方式の多重容量わずか数チャンネルであった。

昭和29年、電話、白黒TVの中継用のマイクロ波通信方式が導入され、周波数4000MHzFM方式の電話換算通信容量360CH(1無線CH当たり、以下同じ)であった。マイクロ波デバイスは、クライストロン、進行波管であった。

昭和33年頃、周波数4000MHzFM方式の電話換算通信容量600CHであった。主マイクロ波デバイスは、進行波管であった。

昭和36年頃、周波数6000MHzFM方式の電話換算通信容量1200CHであった。主マイクロ波デバイスは、クライストロン、進行波管であった。以後、半導体デバイスの採用割合が進み、送信増幅の進行波管を残し、固体化アナログFM方式(通信容量2700CH)まで実用化した。 真空管デバイス無線機は短寿命(10000時間前後)であるから、定期的な交換再調整のため無線中継局では有人で保守管理していた。また、通信容量増大に伴い周波数分割多重(FDM)は、電話ではSSB4H/1CH毎に並べて多重化するため、ベースバンドのBPF4kHzごとに並べるので高コストとなり、雑音に弱い欠点があった。(筆者は、昭和36年から2GHz帯全固体式FM多重無線装置の局発部の開発に従事した。)

エポック2:全固体(半導体)化とデジタル無線伝送(パルス再生方式)の導入。

昭和40年代には短距離マイクロ波送受信装置のデバイスが全固体化(全半導体化)され、半導体性能の向上で固体化が進んだ。パルス再生中継のデジタル無線多重化が実用された。ハードも半導体化され長寿命で故障も少なくなった。

一方、パルス再生変復調方式の導入で、アナログ方式の弱点である中継毎の雑音が相加されることなく、伝送距離に左右されない高品質の通信が可能になった。信頼度向上で無線中継所も無人化が進んだ。昭和59年に幹線系全固体化20GHzデジタル無線中継方式(400Mbit/s無線チャンネル当たり)が実用化した。

以後、幹線系大容量通信は光ファイバー方式が主流となり、無線は分岐回線や移動通信に移行する。

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THzプリズム

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【レンズ】

THzレンズ

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コーヒーブレイク  ☆半導体とミリ波☆

能動ミリ波回路の発展は半導体無しではあり得ない。半導体とは、電気伝導度の良い物質(導体、金属)でもなく、電気を伝導しない物質(不導体、絶縁体)でもなく、その中間の電気伝導度の物質といえる。代表的な半導体は、伝導度の良い順にゲルマニウム、セレン、亜酸化銅、シリコン、ボロン がある。

電気伝導度だけなら抵抗値の異なる抵抗器と変わらない。ところが、科学者は19世紀末から半導体特有の特性を発見していた。 この一つは今日のミキサダイオードと同じ、整流する作用である。金属と異種金属、金属酸化物や硫化物を接触させると非線形の伝導度特性を示す。これを応用したのが放送初期の鉱石ラジオの検波器だ。 子供の頃、購入した鉱石ラジオは、電源もないのにレシーバ(イヤフォン)から放送音声が聞こえる不思議な受信機だった。その検波器は、アルマイトの絶縁筒両端に金属電極があった。一方のねじ電極に金属針、一方の電極に方鉛鉱石(硫化金属)があり、金属針が鉱石の表面に接触する構造だった。感度の良い接触位置を金属針で探したことを覚えている。点接触の非機密パケージは、振動、温湿度に弱く短寿命であった。半導体素材は、天然素材から純粋なシリコン、ゲルマニュウーム、化合物半導体が作られるようになり、ミリ波帯でも使えるようになった。一方より高周波帯半導体素子の高性能化引き出すマイクロ波帯、ミリ波帯の素子パッケージの開発が不可欠であった。

ミリ波用素子とパッケージ:検波素子、ミキサ素子は50年前頃まで、シリコン、ゲルマニウムなどの結晶に金属針を接触させる点接触パッケージ構造であった。 1952年のコロンビア大学の論文にRG-98/U導波管内にシリコン結晶にタングステン針を点接触させた構造のミリ波検出用検波器を発表している。

ミリ波導波管伝送方式用には、ショトキーバリアダイオードとしてガリュウム・ヒ素化合物半導体に微小電極を作り込み、その電極にタングステン針を接触させ全体をWR19WR15導波管内に機密封入した高信頼性パッケージ構造のダイオードが採用された。

その後、発振素子など多種の半導体素子の出現で、高周波性、気密性、放熱性、量産性に適応した磁器パッケージが出現した。現在のMMIC全体を実装するパッケージに進化した。

シリーズ : マイクロ波回路設計開発の軌跡 ~その11. 逓倍器が発振する?

バラクタダイオードの多段逓倍チィエンや高次逓倍器では、立ち上げ時や周囲温度などで、出力低下など異常動作することがある。逓倍器は、バラクタの非線形容量を共通とする多数の共振回路で構成されるため、寄生共振回路、バラクタのバイアス回路も安定動作に関係する。外部から直流バイアス電圧を印可する形式より、バラクタ自身がバイアス電圧を発生するセルフバイアス形式の方が安定であった。逓倍器は、パラメトリック発振を起こすことがあり、逓倍tチェーンで後段が無負荷でも入力側の反射が少ない現象があり、調べたところ、バラクタの非線形による負性抵抗で発振していた。

多段逓倍回路の安定化には、中間段にアイソレータ等の非可逆回路を通じて接続することが有効だ。

シリーズ : マイクロ波回路設計開発の軌跡 ~その10. 誘電体ボビンが焦げた!

マイクロ波多重無線機の運用後、出力低下の不具合が発生した。調査したところ、局発系Wクラスの出力並列共振器(タンク回路)用コイルボビン(高分子誘電体)が焦げて変色していた。コイルは共振周波数を可変するインダクタンス調整用フェライトコアをボビン内に付けて上下させる構造だった。工場試験の連続通電時間は短く正常動作を維持できたが、運用に入ると連続通電となり、コイルボビンには連続して、共振器にはQ倍高周波電流がながれるため、誘電体損失(tanδ)、磁気損失による発熱により、熱伝導性能が良くないボビン、コアは局部的に高温となった。コアの温度がキュリー温度(100℃以上)に近くなると比透磁率が大きく低下し、共振周波数が変化するため、出力低下の不具合が発生した。コイルボビンを熱伝導の良いステアタイト(陶磁器)に設計変更し、当該全製品に改修を実施した。

シリーズ : マイクロ波回路設計開発の軌跡 ~その9. 高利得AGC増幅器の発振

ダイナミックレンジの大きい受信器では、最大利得で発振しないようにしなければならない。しかし設計段階で発振可否を判定するのは困難である。

筆者は、AGCMMIC4個使用した高ダイナミックレンジの140MHzIFAGC増幅ユニットを設計製作したが、

プリント基板のグランドパターンで予期せぬ3GHz帯の発振に苦労したことを経験している。

近年MMICに多数使用される能動素子の増幅上限周波数は数GHz以上となり、IF周波数帯より上のマイクロ波で寄生発振する能力がある。

設計段階で寄生発振のシミュレーションは行うことはあまりしない。

製作して初めて不具合に遭遇することがある。

多段高利得増幅回路で寄生発振する主原因は、

1)電源系が正帰還回路になる。

2)増幅デバイスのグランドインピーダンスが高くなる。

3)外部部品の共振による。

4)多層プリント板内の伝搬経路による正帰還。

5)増幅回路収納の金属ケース内の導波管モード伝搬、共振による正帰還、等がある。 

低い周波数では無視できる単純な部品等価回路が、高周波では複雑な等価回路になる。プリント板導体パターンも分布定数として働き、プリント基板内部も伝送路として働く場合がある。そのほか実装金属ケースも導波管モードで伝搬するので入出力の帰還量によっては発振する。筆者の経験では、MMICを複数使用した高利得140MHzIF増幅器で、3.7GHzの寄生発振トラブルがあり、段間にマイクロ波帯LPFを追加し、帰還量を減らし解決した。この場合の増幅器の金属ケースは横幅5cmの長方形であったが、矩形導波管とするとTE10モードの遮断周波数の3GHz以上は伝搬し、共振器にもなる。この場合、入出力のプリント基板パターンを短くする、コネクタ端子とプリント基板の信号線、グランドパターン間を低インピーダンスにする設計も必要だ。

シリーズ : マイクロ波回路設計開発の軌跡 ~その8. 定在波歪でミリ波無線システムダウン

コンクリート室内に設置した映像と制御データを伝送するミリ波無線装置を乗せた移動台を直線状レール上で連続走行させるシステムで、ある位置でストップするトラブルが発生した。

無線区間の設計段階では、想定伝送路にある厚い鉄板障壁に空いた円形導波管を通過させるモデルを屋外で実験し、問題ない受信レベルだった。

現地調査したが装置単体では問題なく、無線機間距離と映像の崩れとエラー発生を細かく調査してそのメカニズムを推定し原因を絞り込み無線機間の定在波歪によるとした。

無線機区間が近く、周囲に無線波が反射する構造では、送信波の多重反射が起こり干渉する歪が発生する。

これを検証するために電波吸収体をアンテナ周辺に設置し、トラブルを解消した。無線機間の距離が変化し、閉空間に設置するシステムでは要注意である。

シリーズ : マイクロ波回路設計開発の軌跡 ~その7. 無線伝送システムにおける無線干渉波の影響

無線干渉波といっても様々あり、ここでは至近距離の静電気放電(ESD)によるS/N劣化ではなく、送受信回路を防水構造の金属ケースなどの電磁シールドを施した無線送受信装置で発生した無線干渉波トラブルの話である。ミリ波通信装置を納入後、天候に関係なくビットエラーが発生するトラブルがあり、現地で調査するも、原因不明。次に周辺の強力な無線干渉波源を調査した。付近の山に放送局アンテナが見え、UHF放送局と分かった。その周波数を計算したところ、ダブルスーパーヘテロダイン方式の第二局発と結合し、IF帯域内に干渉波として変換されることが判明した。電磁シールドを強化して解決した。金属ケースは、防水用ゴムパッキンを金属本体と金属蓋で挟み、4隅をねじ止めする構造であったがねじの間隔が与干渉波の半波長と近似していたため、絶縁体のパッキンを通し、ケース内部まで干渉波が侵入した。

シリーズ : マイクロ波回路設計開発の軌跡 ~その6. ステレオ放送音声に微かなビート音発生問題

準ミリ波送受信装置(FM広帯域変復調アナログ伝送方式)により、ベースバンド(カラーTV放送,(NTSC)信号、FMステレオ複合信号、その他追加伝送信号の多重)信号を無線伝送するシステムを納入した。ところが現地運用試験において、復調後のステレオ音声に微かなビート音が発生した。工場試験仕様は伝送基本特性のみで、顧客と同じ多重信号で評価試験する仕様になっていなかった。原因調査の結果、FMステレオ複合信号のコンポジット多重信号の副搬送波(19kHz,38kHz)とNTSC信号の水平同期信号(15.75kHz)が伝送歪によるビート(3.25kHz)と判明。BRF追加で解決した。装置単体(メーカー)、ベースバンド装置(顧客)の各単体装置に問題なくともシステムでは設置現地での試験となる。現地でのシステムトラブルは大変な負担となるので出来るだけ発生しうる問題をシミュレーションしておくことが重要である。アナログ伝送は歪対策設計が重要と改めて認識した。

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